生き急ぐなら、死の匂いは一層濃くなってくる。


《橙狂想曲》



「…爺様。死ぬとは、何でしょう。」
「華乱(からん)?」
「殺すとは、生きるとは、死ぬとは、何だと思いますか?」

寂しそうな声音と、影を背負った背中。
一人の少年が背負うには余りにも重過ぎて、しかし降ろす事を赦されぬ義務。

「…爺様。私は月代の為に死にます。死ぬ為に生きて、死ぬ為に戦います。」

振り向いた少年は、まだあどけない。
目には包帯が巻かれ、鮮やかな橙の短髪が風に揺れる。
やけに其処だけが目にちらついてしまう。

「雫は、冬は、霧雨は、愚かでした。殺すも生きるも死ぬも、解っていなかったから。」
「華乱…。お前は、せめてお前だけでも、無事に帰ってきてくれ。」

華乱の口元が笑った。
笑みの意味は解らない。
自虐なのか、自嘲なのか、残酷なのか、それとも……無意味なのか。


「では、行ってまいります。」



**********



「すーちゃん。…砂湖班長が負傷って知ってたぁ?姫も重症。」
「あの砂湖がなぁ。そろそろ回ってくるかもな、順番。」
「何の?」
「何のってそりゃ、刺客は4人なんだろ?可愛い女の子は砂湖んとこ、クールビューティは飛燕と椄翔…。」
「…可愛い女の子じゃないなら、順番回ってこないと言いねぇ。」
「そんなのお天道様のみぞ知る、ってか?…ちょっと待て、俺がたらしみたいに言うな!」
「きゃはははっ!すーちゃん怒ったぁ!」

銀髪に羽織の能天気らしい朱雀班長は、幼い白虎副班長を連れて処内をてくてくと散歩していた。
緊急時でも慌てないのが冷静と言うか何というか。
時折白虎は大玉の飴を取り出しては口に入れる。
そしてよく舐めもしないうちに歯でがり、ごりと噛み砕いてはまた食べるのだ。

「…白虎、飴ってのは舐めるもんなんだぞ?」
「ひってぅぉ?えもあんかあみあいんだもお(知ってるよ?でも何か噛みたいんだもん)」
「噛むんだったら違うもん食え。」
「ぅーたんのあーか(すーちゃんのバーカ)」
「何言ってんだお前!!このやろ!」

しょうもない喧嘩が始まろうとしたとき、コツンと床と何かがぶつかる音がした。
音の根源は2,3度跳ねたかと思うと、朱雀と白虎の前に落っこちた。
曲がり角の手すりの上から日が差している。
夕日が落ちかけている。
ひゅん、と銀髪が揺れた。
少年の影が落ちている。それは明らかに第三者の物だった。
煎餅を一つ手に持ち、軟く微笑む。


「噛むなら飴より硬い煎餅の方が良いですよ。」


「…白虎、煎餅嫌ぁい。」
「……………我が儘ですね。好き嫌いは良くないですよ。」


刹那、影が消える。
がきん、と音がした。
少年は何処に隠しておいたのか解らない程の鋭いサーベルを、
白虎は先ほどまで髪に飾られていた四葉の髪飾りを、
互いに構えていた。
否、構えていたのではない。
離れたのだ。
影が消え、音がした時には既に触れあい、そして今距離をとっているのだ。

「好き嫌いするお嬢さんは僕には勝てませんからね。」
「むー!お嬢さんじゃないの、白虎なの!」

にこりと、また少年は軟く微笑んだ。

「白虎さんですか。…随分と猛々しい名ですね。本物は可愛らしいのに。」
「褒められたって嬉しくないんだもんねっ!」
「…めっちゃ嬉しそうじゃねえかよ。」
「すーちゃん煩い!」

親子喧嘩を目の当たりにしてくすり、と笑う。
白虎も手にした髪飾りの四葉部分を金属音とともに分解すると、手際よく手に取り付ける。
それはさながら虎の爪の様にきらりと光った。
胸に留めてあるもう一つも同じように逆の手に取り付けた姿は、

「…成る程、確かに『虎』ですね…。」
「違うもん!猫だもん!」

「可愛い猫だ事。」

引きつった様な、そんな残酷な笑みを浮かべた。
次の瞬間にはサーベルは白虎の右脇腹を抉っていた。
何の反応も出来ずに、白虎は崩れ落ちた。

「初めまして、朱雀班長。僕は月代 華乱です、以後宜しく。」
「以後宜しくしたくねーな、華乱君…。にしてもどうしてくれるの、俺の部下。」

貼り付けたような笑顔で朱雀は倒れている白虎を指差した。

「冷静ですね、自分の部下が殺されたっていうのに…。」
「あー…違う違う。」

ざり。
背後からそんな音がした。
振り返れば、切り傷から血を流しながらも立ち上がる幼い姿。
顔を俯かせたまま、二本の脚で立ち上がる。

「覚醒モードになっちゃったじゃんか、白虎。」

にぃ、と口元を引き攣らせて白虎が哂った。




「華乱………遊ぼ?」




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久しぶりにピン●ー食べてみました。ъ(゚Д゚)グッジョブ!!(何が









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