虚(とみて)星が輝けば、私は死ぬの。

《方位守護の二重奏》




時雨には両親が居ない。
何故なら捨て子だからだ。
それを一流貴族の飛燕 姫結(ひめゆい)が拾い育て、
その後現総括長の白舞が育てた。

……………姫結は死んだ。紅蓮の焔に焼かれて。
しっかりと見た筈なのだ、時雨は。


「って表向きにはなってるからなー。」


藍色に白い伝説上の鳥『風斬鳥(かざきりどり)』の扉の前に白舞は佇む。
風斬鳥は翼で竜巻を起こし、一声啼けば鎌鼬(かまいたち)で辺り一帯を破壊する鳥のことだ。
この扉は蔽班の処、『風斬処』の入り口だ。
それを通り過ぎ、病棟に向かおうとする。

瞬間、時雨の気配がした。

「時雨!何処だ!」
「どーなってんの!?」

その声を聞きつけた時雨が飛び出してくる。
どうやら病棟から丁度帰ってきたらしい。

「夢幻術は?」
「解いた。そんなことじゃなくて、どうなってんの?!」
「何がだ!」



「仔朱鷺(ことき)が居ないの!」


時雨によれば、仔朱鷺は先程まで用事を頼んでいて、病棟で意識を取り戻してから仔朱鷺に会いに行こうとしたところ、
爆破が起きた瞬間、気配がぷつりと途切れたらしい。
何も無いと言いのだけれど、と時雨は付け加える。
白舞は小宵に紅染 ヒナ捜索の命令を出した事を手短に伝える。
話を聞いていると、忍速で向かう気配が近づいてきた。

「白舞!」
「楓。お前大丈夫か?」

「焔は風と違って夢幻術みたいな影響は受けないからな。班員は全員解散させた。」


能力にはそれぞれ性質がある。
風や水は影響を受けやすいが、適応能力が幅広い。
逆に、焔や雷は影響は全く受けないが、加減が出来ない。
地はオールマイティに平均的で、獣は自己の身体の調子で左右される。
それぞれの能力の長所を生かし、それを磨き上げたもので一番強い者は《酋》と呼ばれる。
そして《酋》だけが持つことの出来る、そして《酋》だけが認められる刀が有るのだ。
非常事態に、楓も時雨も帯刀していたようだ。

「楓、うちの仔朱鷺知らない?気配が無いんだけど。」
「東風も居ない。どうなってんだ?」


「嫌な予感がするな…。」


白舞は小さく呟いた。














「貴女は…誰?」


虚ろな瞳で月代 雫は目の前に現れた女性に問うた。
月が月光で照らす。
すると女性は優しく微笑んだ。
夜闇が良く似合う。

「人に名前を聞くときには、先ず自分が名乗るものでしょ?」
「…四季曜石、月代 雫。」
「へぇ、月代一族の子なのねー。」

漆黒の髪はいくらか明るい。
女性はまた微笑んだ。
そして右手に持った大きな薙刀を地面に突き刺した。
それは決して脅しではない。
寧(むし)ろ優雅で雅やかな踊りの一部のような動き。
流れるような動きに思わず見入ってしまいそうだ。
しかし雫は身構えた。

本能が告げている、いや理性で言ってももう分かっている。


―――――この人は危険だ。逃げなければならない。


脇に抱えた少女、自分の任務である輪廻転生をぎゅっと腕に力を込めて抱える。
自分の任務なのだ。命に代えても此処を切り抜けなければならない。
この輪廻転生の名は確か…

「春 姫(チュン フィ)、輪廻転生。」

雫は小さな声で額に泥を塗りつけて呪文を呟いた。
びくりと小さな少女 ―如月の班、爾(に)班の副班長 姫― の身体が反応した。
これで誰も手出しできないはずだ。
雫は改めて女性を思う。
ふと、薙刀の抜ける音がして顔を上げた。

そういえば、と雫は思い出す。


「貴女は…誰?」


また微笑む女性は薙刀を左手に持ち替えた。



「国家守護者、北方守護者の虚(とみて)星…」

「…。」



「飛燕 姫結よ。」




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姫結ちゃんの名前は、友達の名前を参考にさせてもらいました。

ありがとーね。

あと見てないと思うけど

確認取らないまま勝手に使っちゃってごめんね(ヲィ






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