紛い物の私は如何しようもなく破滅するだけ

《影の中の賛美曲》





「やっほ!仔朱鷺、元気?」

紺色の瞳を悪戯っこのように輝かせる人。
その人はいつもと変わらぬのんきな声で言った。

「時雨班長。お元気になられましたか?」
「ん。大丈夫。」

時雨は朔夜の病室で尋常ではない頭痛を訴え、しばらく職務を休んでいたのだ。
仔朱鷺は安心したように微笑んだ。
書類を渡し、いつものようにサボらないように扉に鈴をつける。
仔朱鷺は筆をおいたとき、伝言を思い出した。

「班長、そういえば維班の副班長が呼んでましたよ?」
「何か用事?」
「さぁ…大事な話があるとかで……。」

首をかしげると、紺色の髪は光を浴びてきらきらと光る。
仔朱鷺は心配そうにたずねた。

「行って来ますか?今。」
「うん、そうする。」
「じゃあサボらないでくださいよ!

綺麗な紺色の瞳を見つめて言った。
時雨は無造作に置いてあった東雲を手に取って駆け出した。
その後、仔朱鷺は違和感に気づいた。

「班長っていつも帯刀してたっけ…?」







緋焔(ひえん)処の執務室で焔酋と副班長が仕事をしていた。

「おい。」

返事は無い。

東風(こち)!起きてるか?時雨と約束してるんだろ?今日は出勤してるみたいだからもう来るんじゃないか?」
「う……んんぅ。おはよう…楓。」

楓は呆れた顔で副班長、狐火 東風の頭を書類で叩いた。
本人は眠そうな顔をして「痛いよ…。」と呟く。

東風は美少女といって差し支えない顔立ちだ。
いくらか明るいセピアの髪と、宝石のような橙色の瞳。
仔朱鷺とは貧民街の仲間である。
いつも眠そうに欠伸をしている。

「東風、俺ちょっとこの書類届けてくるからな。」
「ぁい。」
「ちゃんと起きてろよ!」

楓はそう言って執務室を後にした。
しん、と静かになった緋炎処の中は程よく暖かい。
正に昼寝日和だが、東風は睡魔と闘っていた。

「狐火副班長、居る?」

時雨の声がした。
がばっ、と東風は眠気をふっ飛ばし、扉を開けた。
見慣れた紺色の髪が笑っていた。
東風もにっこり笑って通す。
お茶を慣れた手つきで差し出す。
時雨は帯刀していた刀を外して、床に置く。
東風は、違和感に気づいた。

「話って何?」
「…。」
「狐火副班長?」


「貴女、誰?」


「何を…言ってるの?」

東風からは先ほどまでの眠そうな表情はもう無い。
副班長にふさわしい厳しい表情が浮かんでいる。
紺色を真正面から見据え、殺気を放つ。

相手は観念したように笑った。
髪の毛を解く。
おもむろに額に手を当てると、そこには何か呪印が浮かび上がった。

「やっぱりバレちゃった?」
「…飛燕班長はいつも帯刀してない。」
「あ、そ。」

相手は大して面白くもなさそうに言う。
東風には殺気をそのまま、否倍に膨れ上がらせる。


空気が冷たい。


しかし相手はまだ動じない。
そのまま笑っただけで、何も動かない。

「楓が帰ってきたら、死ぬよ?貴女。」
「そうだね、あの焔酋は見くびれない。」

時雨と同じ紺色の髪と紺色の瞳。
嫌になるほどそっくりな顔。
声は、人為的に変えていたのだろう。
先ほどとは打って変わった、低い声。

―――何者だろう。


不意に、風が吹いた。
相手はいつの間にか窓を開け、そこに立っている。


「白舞に伝えておいてよ。」


哂った。



「お命頂戴、仕る。」



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書き直しすぎてすみませんorz

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